以前、こんなブログ記事を書いた。
「ゲームの歴史を学ぶのであれば「ハイスコアガール」を。」というタイトルでここ最近アニメでも大人気、ハイスコアガールという漫画の紹介をさせてもらった。
とても面白い漫画なのです。
舞台は1990年代前半、そして物語の中心はその頃流行ったゲームセンターなどのテレビゲームを遊ぶ少年少女を題材とした漫画。
注目すべきは「スト2」や「サムライスピリッツ」など実在したゲームを取り扱い、1990年代前半のそのゲームの盛り上がりも一緒に紹介しているのです。
戦国時代の「花の慶次」や明治時代の「るろうに剣心」など数多くある歴史漫画、だがそれは描いている作者すら生まれていない「歴史漫画」であったが、このハイスコアガールは違う。
この作者もこの時を生きた人間であり、これは立派な「平成の歴史漫画」である!と私は感じました。
という内容の記事を書いたのですが…。
この記事を読んだ方に寄せられたコメントは
「お前の好きなラブコメ紹介してるだけじゃねーかよ」というものだった。
・・・?
そんなバカな…、と思い、記事を読み返してみると衝撃的なモノが目に入った。
「私は何故、このテレビゲームを通した少年少女の恋物語を立派な歴史漫画だと思ったんでしょうか。」
・
・・
・・・
本当だ、歴史一切紹介してねぇ。
と、いう訳で今回は「今度こそ平成の歴史漫画であるハイスコアガール」がどんな漫画なのかを紹介していきたいと思います(。-`ω-)
1-CREDIT:「嬉しかったのによ」
「仕方ねぇ、お前も一端のアーケードゲーマーだからな…」
「一緒に遠征だ」
ゲーム大好き少年「矢口ハルオ」の自転車の後ろに乗るのは「大野昌ちゃん」
彼女はゲームの腕よし、顔よし、頭脳よし、コミュニケーション能力最低という小学生の女の子だ。
無口な彼女はお金持ちの家のお嬢様、帰宅すれば専属の家庭教師に英会話やら水泳やらとにかく勉強で予定はビッチリ。
そんな彼女の癒しはそう、ゲームセンターでアーケードゲームをプレイすることだ。
矢口君と自転車を二人乗りするきっかけも「スト2」での対戦だ。
勉強も何もできない矢口君、秀でるものはスト2の腕前のみ。
そんな彼が受けた屈辱は自分だけの憩いの場ゲームセンターに現れた
ザンギエフで29連勝を叩き出す同じクラスの大野さんの存在だった。
だが、この二人はゲームを通して、仲良くなっていくのであった。
最初は矢口君が嫌いだった大野さん…そして大野さんが嫌いだった矢口君。
「しんどくなったら逃げて来いよ」
「また妙チクリンなゲーセン連れてってやるからよ」
矢口君は大野さんを認め、大野さんは矢口君の優しさに惹かれて行くのだった。
が、そんな二人の関係は急に終わってしまう事に。
大野さんは海外に引っ越す事になったのだ。
「今お前にあげれるもんはコレしかねぇ…もらってくれるか?」
矢口君、大野さんとの別れに一緒に行ったゲーセンで取った景品「安っぽい指輪」をプレゼントした。
大野さんは泣いた。
自分に優しくしてくれた矢口君に抱いていた感情が「友情」でなく「恋心」であった事に気が付くも、彼女は海外へ行く事に変わりが無かったのだ。
矢口君から「安っぽい指輪」を受け取り、彼女はアメリカへと発つ。
矢口君はまた大野さんとゲームで対戦できる日が来る事を楽しみに。
そして大野さんもきっと、矢口君にまた会える日を楽しみにしているであろう。
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1993年1月 ビル・クリントン アメリカ合衆国大統領に就任
そう、忘れてはならない。これは歴史漫画なのだよ。
クリントンが大統領になった1993年ごろからこの漫画は話が続く。
もちろんゲームの歴史も紹介される。
相変わらずゲームばかりしている矢口君も…
中学3年生になっていた。
そして大野さんも…
日本へ帰国し、矢口君と同じ中学校に転入したのであった。
帰国した大野さん、矢口君と同じ中学校…!
矢口君の反応は…!
大野さんの転入に気付かず、スト2な毎日だった。
クズだ、やっぱりクズだ矢口ハルオ。
↑矢口君を慕う女子 日高コハルを連れてゲーセンである。
彼の中でまだ大野さんは「海外に居る」という事もあり、女を連れて楽しくゲーセン。
なんて羨ましい奴なんだハルオ。
良い顔してるぜ、ハルオ。
そんな良い顔のハルオ、後日掃除の時間中に大野さんの帰国を知る。
今度こそハルオ…その反応は…!?
「ん・・・?」だった。
ク…クズ…!喜ぶとかしろ!クズ…ッ!
だが、大野さんが帰って来たと知ったらハルオの行動は一つ。
向かう先は大野さんと会うべくゲーセンへ。
「とうとう帰ってきたか…大野…!!」
「足が震えるぜ… どうしたこったこれは…」
「ん・・・?」は彼なりの照れ隠しだったのだろうか。
とにかく内心喜んでいる様子のハルオ。
数年前、こんな事があったのだ。
もう一度会える事が嬉しくない訳がない。
その後止まってしまった大野さんとの関係を…
ゲーマーとして会いたかったらしい。
大野さんを探し、ゲーセンへ向かうハルオであった。クズッ…!
一方、大野さんから見たハルオ…
異性とし意識しているハルオが
自分の事など気にもせず、他の女子と一緒に居る所だった。
ハルオは見つけた…
何一つ変わっていない、大野さんを。
「久しぶりのご挨拶は…レバーとボタンでだぜ」
クズ、改めゲーマーのハルオ。大野さんの再会はスト2の対戦で、と。
対する恋する乙女、大野さん。
乱入してくるハルオに気付き…
逃げる。
「なぜだ…!!」じゃねえよクズ、恋する乙女は再会の挨拶をボタンとレバーでなんかしたくねーんだよバーカ。
「勝負をする前に去られるなんて・・・屈辱だ・・・」とヘコむクズハルオ。
揉めている他のゲーマーの争いに巻き込まれる。
あうう
突き飛ばされたその先は…
ファイナルファイトで遊ぶ大野さんの筐体だった。
「しまった…コイツの1プレイ分…2プレイヤーボタンを押しちまった」
クズが参加してしまったせいで、二人一緒でないと先に進めなくなってしまった。
ハガー市長はガイを置いて先へ行けないのだ。
ハルオ、とりあえず謝罪をし大野さんと共同プレーに。
そう、このファイナルファイトの共同プレーは小学生の時以来だった。
不意ではあるが、再びファイナルファイトを共同プレーする事となったクズゲーマーハルオと恋する乙女の大野さん。
荒らぶる大野さんのハガー市長。
やはり女の子でなくゲーマーとして見られているのが気に入らないみたいだ。
「大野の心情がハガーに乗り移ってるようだぜ…怒ってんのか…!?」
大野さんハガーの荒れている様子を見て流石のクズも大野さんの気持ちを感じ取れたようだ。
大野さんの気持ちが通じたハルオの取った行動は…
そうじゃねえだろぉハルオォ。
とりあえずお金は返すも、大野さんの気持ちには気が付かなかった。
そうじゃねえだろぉハルオォ。と言わんばかりに大野さんも行動で示す。
大野さん、キレすぎ。
「言葉にしなくてもコイツに罵声を浴びせられてる気がするぜ・・・」
矢口君、乙女である大野さんの気持ちは解らないが、とにかく自分が否定されているのだけは気が付いた。
その否定されているのがゲーマーとしてなのか「矢口ハルオ」としてなのか。
矢口君は今、解らなくなっている。
ただ、解っている事、それは…
大野さんが帰って来て嬉しかったこと、だった。
二人の再会はこんな感じで終わってしまった。
とにかく大野さんに再び会えて嬉しかったハズの矢口君、そして女の子扱いされない事から矢口くんを拒んでしまった大野さんだった。
2-CREDIT:「目のうえの たんこぶ…?」
大野さんが気になってしょうがない男子は矢口君だけじゃなかった。
綺麗な顔に無口、そして謎が多い彼女を気になる男子はたくさんいた。
ハルオの友達、宮尾君もそうだった。
「同じ小学校だったんだろ…どんな子だったんだよ」
「不愛想で無口な奴だったよ」
確かにそうだけどさぁ、ハルオ君さぁ。
先日の悲しいファイナルファイト事件をまだ彼は気にしている様だった。
ここでハルオは重要な情報を入手する。
ゲーセンに突如現れた豪鬼使いの人物、それは大野さんだったと判明。
半べそかくくらいにヘコんだくせに、ゲームの事となると話は別な矢口君。
そしてお昼休み…
体育館…
で、ゲーメスト読みながら昼飯を食っていた。
なんなんだコイツは。
「お 大野さん…っ」
「イキナリ呼び出してゴメンよ!」
体育館に呼び出された大野さん。
「一目惚れです…!!」
なんと、彼女は体育館に呼び出され、告白されていた。
しかもハルオの前で。
その大野さんの返事は…!?
ダメっぽい。
フラれた彼、ゲーメストを読んでいた矢口君に絡む。
「ジロジロ見くさってちきしょう」
「いや…キミが勝手にここで告白劇を始めたんじゃないか…」
「皆信じてないけど…大野さんとお前が一緒にいる所を見たって言ってる奴がいたぞ!?」
「大野さんはお前のなんなんだよぉ」
告白された事に関しては迷惑そうにしていた大野さんだったが、不意に矢口君の気持ちが聞けるチャンスが訪れた。
さあ、ハルオ…!大野さんにお前の正直な気持ちを教えてやれ!!
死ねクズ。
大野さんもこの表情だ。
もう怒っているのか悲しんでいるのかすらも解らない。
居たくない気持ちもよく解る、大野さん、その場を去る。
そして意外、クズであるハルオ、大野さんを追いかけた。
大野さん、ハルオの「目の上のたんこぶ」は中学生特有の女子に好意はありません的な表明をしたかったんだろうけど言い過ぎたから謝ってくれるのだろうきっと、と思ったのだろうか、立ち止まる。
ほらね、やっぱりそうだ。いくら「やーいお前大野が好きなのかよヒューヒュー」と言われたくなかったからって「目の上のたんこぶ」はヒドイよ矢口君。
ちゃんと謝りなさい、ほら、「ごめんなさい」って。
「ご…」
死ねクズ。
こうして矢口君は大野さんが何故怒っているの解らず…
そして大野さんは少しずつ矢口君を嫌いになっているであろう中…
修学旅行に行くのであった。
この京都の修学旅行には矢口君は大きな目標がった。
修学旅行の自由時間を利用し…
ストリートファイターの大会に参加する事であった。
大阪の強者と対戦する、という大きな目標だ。
それは矢口君のゲーマーとしての野望…
大野さんもまた、その大会に出場する予定であった。
3-CREDIT:「負けるワケにはいかねぇ…!!」
矢口君、自由行動の班を抜け、一人京都から大阪の梅田へ。
ゲーマー矢口ハルオ、緊張している。
そして会場へ到着。
とにかく人が沢山だ。何と言ってもここに居る人はみな参加者なのだ。
矢口君は「ありとあらゆる大阪の強者達がここへ集っているのだ…!!」とテンション上がり気味だ。
大野さん発見。
ゲーム大会の会場に居ても乙女な大野さんだった。
本番前にして大野さんの態度に逆ギレする矢口君。
だが、矢口君はある事に気付いたのだ。
この前は挨拶代わりにと対戦しようとしたが逃げられたクズのハルオだったが…
そう、この大舞台なら彼女は逃げられないので、対戦の夢が叶うではないか…!という事に。
ゲーマー矢口ハルオ。
大野さんとの再戦のため勝ち残る事を誓ったスト2大会が幕を開けた。
ついでにこの大会、優勝賞品は「トロフィー」とお風呂セット。
お風呂セットいらねぇ…。
お風呂セットはアレとして、大会は幕を開けた。
大野さんは順調に勝ち進んでいる様子だ。
やはりザンギで。
一方矢口君は…
こいつ意外と緊張しいなのな。
すると緊張する矢口君にどこからか声が聞こえた。
「緊張の解き方 教えてやろうか?」
そう、その声の主は以前大野さんに会うため空港へ行くのに背中を押してくれた…
やはりガイル少佐。
ここぞという時にハルオを助けてくれるナイスガイだ。
だが緊張の解き方は「手のひらに「人」の字を3回書いて…」と驚くほどに庶民的だった。
ああ、飲み込むんだっけ、人って字を。
あれって誰が考えたんだろうね最初に。
「人と言う字を飲み込む」というだけでも意味不明だとい言うのにそれを実践した人がまた「緊張が解けました」ってんだから今もこう、世の中に広まってるんでしょ?
本当こう、何に関しても一番最初に考えた人ってのは凄いよねぇ
人という字を三回書いて、それを口元に持っていき・・・
あんた何してんだよ。
ガイル少佐、何してんだよアンタ。ファネッフーってなんだそもそも。
なんつードヤ顔だ。
「どうだ…!少しは緊張が解けただろう!!」じゃねーっつーの。
いやお前もお前で緊張解けたんかい。
効果はあったらしく、矢口君も調子がよくなり、勝ち抜く。
もちろん大野さんも順調。
「スキあらば吸いまくる 大野選手の手によりザンギエフは人間掃除機に変貌してしまう~~~!!」となんか恥ずかしい実況をされつつ勝利。
「この戦いの女神はどこまで勝ち進める事ができるのか~~」と、勝負が終わっても恥ずかしい実況をされてしまう大野さん。
何だか一人で居るのが恥ずかしい気分なのか、照れつつもさりげなくハルオの所にテクテク…
クズ、そんなんだから大野さんに嫌われちまうんだよ。
ほらぁ。
そして、大野さんに引き続き矢口君も順調。
「負けるワケにはいかねぇ…!!」
「大野と戦うまでは…!!」
矢口君、とうとう決勝進出を決める。
その決勝戦の相手は・・・
そう、大野さんだ。
大阪の大会で逃げられたスト2対戦の再戦の夢が叶ったのだ。
「ずっとお前は俺の事を無視し続けているが・・・」
「ゲームの中でならどうだ・・・」
「昔のように存分に語り合おうじゃねぇか」
「大野・・・!!」
ゲーマーとしてなのか、無視されている中でやっとコミュニケーションが取れるからなのか、とにかく嬉しそうな矢口君。
これから、決勝戦が始まる。
4-CREDIT:「どれだけ楽しみにしてたか・・・」
とにかく会場大盛り上がりな矢口君vs大野さんの勝負。
1本目は矢口君が勝ったようだ。
先制した矢口君だったが、ふと思った…。
何か違和感を感じるようだ。
「・・・まさか・・・手を抜いているのか・・・?」
とか考えたが予想は外れ、思いっきりボコられるガイル少佐。
「手なんて抜いてねェ…!!確実に殺しにかかってきてる!!」
矢口君、違和感の予想は良くも悪くも外れ、ファイナルラウンドへ突入。
2本先取の勝負、現在結果は1対1だ。
矢口君はこの勝負、負けたくなかった。
「負けるわけにはいかねェ…!!」
「小6から続いた因縁対決に決着をつけると同時にー・・・」
「俺の力を認めさせるんだ…」
小学生の時、憩いの場ゲームセンターに突如現れた大野さん。
彼女は難しい女の子だったが、ハルオは彼女を認めた。
ゲーマーとしても、一人の女の子としても。
小学生の時、空港で別れ、中学生になり再び突如現れた大野さん。
ハルオは昔のまま、また仲良くしたかった。
でも、何故だか解らないまま無視をされた事に酷く傷ついた。
だが、それで自分が何故傷ついたのかはまだ解っていない。
傷ついたのは大野さんも同じだった。
小学生の時、自分を受け入れて優しくしてくれたハルオ。
抱いたのは「恋心」だったが帰国してみるとハルオからはゲーマーとしてしか見られていなかった。
見送ってくれたのに、帰って来た事にすら気付いてくれなかった。
異性として意識している事に気付いてもらえなかった。
大野昌は女の子なのだ。
矢口君はゲームなんか無くても大野さんに優しくしてくれたんだ。
矢口君もゲームなんか無くても大野さんと仲良くできるのだ。
大野さんは信じている。
また、ハルオと仲良くできる日がくる事を。
ハルオも望んでいる。
また大野さんと仲良くなれる日を -
勝ったのは、矢口君だった。
小学生から続く、大野さんに勝ちたいという因縁の対決。
この大阪で行われたスト2大会で、その因縁に終止符が打たれたのであった。
なのだが、なんだかあまり嬉しくなさそうな矢口君。
大会終了後も、何だか実感が沸かない矢口君。
「大野に勝って優勝したってのに…なんだろうこのモヤモヤ」
せっかく優勝したのに何かが納得いかない矢口君だった。
そんな時、衝撃的な言葉を耳にする。
「2P側筐体のパンチボタンが全部利かねぇぞ」
「じゃあ…大野選手はパンチボタンが全部壊れた状態で決勝戦に…」
矢口君の感じた違和感はコレだった。
決勝戦で大野さんがプレーしていた方の筐体は不具合でパンチボタンが効かなかった。
となると大野さんの使うザンギエフはパンチボタンを使う必殺技どころか、パンチすらできない状態で決勝戦、矢口君と死闘を繰り広げていたのであった。
この決勝戦は矢口君にとって、凄く大事な勝負であった。
彼にとってゲーマーとして大野さんと決着をつけたくて、会えない間に少しでも彼女に追いつきたくて必死になっていた数年の想いが込められた決勝戦だった。
矢口君は本気で闘っていたと思い込んでいた大野さんに勝利した。
大 野 … … … ッ ッ ッ
何と表現していいか解らない気持ちになった矢口くん。
とにかく彼は会場を後にし、大野さんを追った。
矢口くん、大野さんを発見。
「待てこのやろうっ」「ナメた真似しやがって!」
「パンチボタンが全部利かねェ事なぜ申し出なかった!!?」
はたから見れば「何怒ってんだよ」と言いたくなるような発言ではあるが、ゲーマー矢口ハルオからしたら重要な事だった。
大野さんに追いつくためにこの日までゲーセンで腕を磨いてきたのだから。
彼にとってキックボタンだけで勝負だなんてコケにされているのも同然なのだ。
「真剣勝負をなんだと思ってやがるんだ」
怒る気持ちはわか…ぃゃ正直解らんが、この矢口君の形相、今にも大野さんに襲い掛かりそうだ。
いくら君がクズ野郎でも、流石に女子に手をあげちゃいけない!
ハルオ…ッ!止まるんだハルオ…ッ!!
あぁ忘れてた、この子リアルファイトも強いんだったわ。
だがハルオも倒れない。
大野さんの裏拳を喰らってもまだ言いたい事はたくさんあった。
「今まで鍛錬を積み重ねてきたのは…いつか帰ってくるであろうお前と互角に戦うためだったんだ」
「同志だと思っていたが俺とお前は違う世界で生きる人間だったんだな…」
「帰ってきても相も変わらず成績優秀 人望もあって男子にモテる」
「やはり俺にとっての大野は目の上のたんこぶ…」
ゲームを通して仲良くなった二人。
秀才・容姿端麗のお嬢様である大野さんとただのゲーム好きの少年矢口君。
本来住む世界が違う二人かもしれないが、ゲームに関する想いは’’同志’’だと思っていた。
だが、矢口君は同志だと思っていた大野さんに裏切られた気持ちでいっぱいだった。
「俺にとっての大野は目の上のたんこぶ」
これは改めて意味を説明すると「邪魔なもの」「うっとおしいもの」だ。
また大野さんと仲良くできる事を望んでいたが、今自分からそれを諦める事に - ・・・
大野さんも怒った。
勝手に同志だとか因縁の対決だとか言ってる矢口君に怒った。
同志だとか以前に彼女は彼の優しさに惹かれていたのだから。
小学生の時、空港で見送ってくれた優しいハルオに惹かれていたのだ。
彼女は異性としてハルオを意識しているというのに「同志」だとか「因縁の対決」だとかそんな風にしか自分を見ていない事に腹を立てた。
しかも揚げ句の果てに「目の上のたんこぶ」とか言われた。
自分の好きな相手にそんな事を言われたのだ。しかも2回も。
「ゲームを通して仲良くしたい矢口君」と「異性として意識している大野さん」
この二人のすれ違いは今、限界を迎えている。
でも大野さん…やりすぎ。
でも諦めないハルオ。
「さんざんシカトしたあげくにコレかい!!」
「とことんやってやらぁ」
気合は十分なハルオ。大野さんに掴みかかるが…
「ン’’ッ」逆に投げられる。
だが諦めない、ハルオ。
「負けてたまるか大野ーーーーーっ」
殴られっぱなしのハルオ。
とうとう彼の反撃が始まる。。
ハルオ、あんたが紳士なのは伝わった。
↑こんなになるまでキレてたのに頬をギューなだけのハルオ、マジ紳士。
頬ギュゥ攻撃、意外と効いたのか大野さん、足を滑らせる。
転がり落ちていく二人。
形勢逆転か。倒れ込む大野さん、上になる矢口君。
ハルオ、馬乗りになったハズなのに大野さんにボコられる奇跡。
ボコボコに殴られるハルオ。
だが、まだ彼には伝えたい事があった。
「大野…ッ」
「 お 」
「お前が帰ってくる事をどれだけ楽しみにしてたか・・・」
大野さんは今、確かに聞いた。
ハルオが自分に対しどう思っていたのか、を。
矢口君は驚いた。
彼女の首もとに、自分が渡した指輪があった。
「お前…なんでこんなもん…いまだに持ってんだよ…」
「・・・なんで」
ゴロゴロ転がっちゃうレベルの喧嘩をした二人はとりあえず銭湯に行った。
そう、優勝賞品のお風呂セット、全然いらなくなかった。
大野さんを待つ矢口君はファネッフーなガイル少佐と話していた。
「ボタン不調の件は彼女なりに会場の空気を読んだに違いない」
「決勝戦で沸く中勝負を中断させる事に気が引けたのだ」
と、少佐、矢口君にフォローを入れるも矢口君的にはもうどうでも良さそうな顔だ。
大会参加者全員が貰えたスト2Tシャツに着替えた二人。
「完全にペアルックだなオイ!」
二人のわだかまりはいつの間にか、消えた。
矢口君の本音を聞いた大野さん、大野さんの心に触れた矢口君。
二人の関係は、小学生の時と同じに戻って行った。
こうして彼らの修学旅行は終わった。
帰りの新幹線でハルオの友人、宮尾君は言う。
「もうすぐ真サムライスピリッツが稼働するんじゃないか」
「お前にとって楽しみだらけな事になるぞ」
怒りゲージ満タンで武器破壊技が使えるようになった真サム、こりゃまた宮尾君もハルオの喜びそうな話を振ってくれるなぁ。
「まぁそれもそうだが…俺もそろそろ真剣に進路の事で悩まないといけないんだよな」
大好きなゲームの話を振られたのに、「進路」とか真面目な事を言い始めるハルオ。
この修学旅行、大野さんとゲームも心も本気でぶつかったハルオ。
ハルオは少しずつ、気付いていた。
5-CREDIT:「…大野…俺なぁ…」
修学旅行が終わる時「進路が…」とか言っていたハルオであったが、夏休みに突入した彼はゲーセンで新作「ヴァンパイア」が稼働してないかを確認すべく、ゲーセンに居た。
「お嬢様ッ」という声が聞こえたハルオ。振り向いてみると…
勉強やら習い事から逃避したくてしょうがない大野さんと、それを連れ戻す事に必死な大野家の執事、「じいや」の姿があった。
「せっかくの夏休みに学業だけに縛りつけられちゃフビンで仕方ないよ」
「お嬢様の息抜き役は俺が務めるから」
と、大野さん息抜き役を買って出るハルオ。
バーチャファイターで遊ぶ大野さんと矢口君。
大野さんも少しは息抜きができたようだ。
大野さん、じいやの車にて帰宅。
「一緒に遊べる友達はいねーのかな・・・」
「ホンットにいつも一人って感じだよな・・・」
ハルオ、大野さんの事について考える。
布団に入っても考える。
夏休み、ハルオは大野さんの息抜き役としてよく遊んだ。
バーチャがサターンに移植されるらしいと盛り上がり…
ゲームを一緒に楽しんだり…
一緒にアイスを食べたり。
この前まで殴り合ってたのが嘘のようだった。
家でゲームをしていてもハルオは大野さんの事を考える…
「別々の高校ってか…」
「もうすぐ中学最後の夏休みも終わってしまう…」
とにかく毎日一緒に遊ぶハルオと大野さん。
息抜き役も最終日。
大野さんと矢口君はラーメンを食べていた。
「お前 あの上蘭高校受けるんだろ?」
「俺は高校なんて入れればどこでもいいけどお前は大変だよな」
さぞ偏差値の高い学校なんでしょうね、上蘭高校。
「息抜き役もこれで終わりか…」
「今までみたいに気軽に出かけたり出来なくなるな…」
夏休みの大野さんの息抜き役はこれでお終い。
じいやの迎えに来てくれた車に乗り、帰る大野さん。
矢口君は気になっていた事があった。
「…お前 俺と一緒にいて…楽しいか」
大野さんは、首を小さく縦に振った。
そして大野さんを乗せた車は出発した。
「アイツが高校に入って一人で居るようなら…」
「いい気晴らし役にでも俺がなってやって…」
大野さんと少しでも一緒に居れたら良いなという気持ちがハルオから生まれた。
ただ、「気晴らし役」などと少し遠まわしな理由だった。
「いや…本音はそうじゃねェだろ」
「自分に正直になれ・・・!!」
小学生の時、背中を押してくれたガイル少佐が教えてくれた事…
「己に正直になれ」という事。
本当に気晴らし役なのか?
ガイル少佐に頼らないでハルオは今、自分に正直になる。
俺は 大野と一緒に居てぇと思っているんだ
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夏休みが終わり、新学期が始まった。
放課後、大野さんは矢口君の下駄箱を見る。
きっと大野さんは矢口君はどこに居るのだろう、と考えているに違いない。
夏休み毎日一緒に居た矢口君を大野さんはまだ見ていないのだ。
新学期が始まってからゲームセンターに行っても、矢口君の姿が見えないのだ。
あのゲーム好きの矢口君が、ゲームセンターに現れない。
学校が終わった後、矢口君はどこに居るのだろうか。
矢口君に会えないからだろうか、あの大野さんが全然勝てないスランプ状態らしい。
何日経っても矢口君はゲームセンターに現れない。
大野さんは何か釣りのゲームで遊んでいる。一人で。
矢口君がゲームをする場所はゲーセンだけではなく、ゲーム筐体が置いてあれば駄菓子屋でも酒屋でも彼のテリトリーであったのだが、そこにも現れていないようだ。
矢口君の友達、日高さんも心配している。
何日経っても矢口君はゲームセンターに現れない。
大野さんはゲームセンターに居る。
いつも矢口君を探していた。
ただ、矢口君は現れない。
執事のじいやも大野さんを心配している。
その後ろ姿は、じいやにも伝わるくらい、寂しかったのだろう。
矢口君がゲームセンターに現れなくなってから半年が経とうとしていた。
その日は中学生なら誰しもが試験会場へ向かう日だ。
急にゲーセンから姿を消した矢口君だって、そうだ。
試験会場に向かう矢口君、そして頑張ってと手を振る母。
予想外すぎるじいやの登場。
「え…なんで…お迎えって…」
「今日の行き先はお嬢様と同じでございましょう?」
「俺は大野と一緒に居てぇと思っているんだ」
ハルオのこの言葉に嘘は無かった。
彼は夏休みが終わってからの半年間、ゲームで遊ぶという事我慢し、毎日毎日家で勉強の日々だったのだ。
必死に勉強して、大野さんと同じ高校を受けて、一緒に高校生活を送る事。
これがハルオが考えた大野さんと一緒に居る方法であった。
じいやは、外でバッタリ会ったハルオの母親から「大野さんと同じ上蘭高校を受験する」という事を聞いたそうだ。
「この話はお嬢様にはお伝えしておりません ご自身でお話しください…」
じいやもハルオと大野さんの事を察してか、大野さんはまだこの事を知らないらしい。
「お嬢様はお好きであられるゲームセンターに居ながらも心ここにあらずでした・・・」
大野さんはハルオを待っていた。
そうハルオに伝えると同じ行先きの「上蘭高校」に向かうべくハルオは車に案内された。
久々の対面、ハルオと大野さん。
久々すぎてか気まずそうな二人。
こーゆー時は男がなんとかするんだよハルオ!
喋れ、何か大野さんに喋れ!「元気だった?」とかほら!
紳士ハルオ、大野さんとの緊張をほぐすため話を振る。
「・・・バ・・・」
バ…?('ω')ノ
他にもあるだろぉ、話題がぁ。
小学生の時、空港で見送る時も「餓狼伝説が…」とかでしたよねたしか。
「あれぞ格ゲー界の…いやゲーム界の革命だった」
せっかく大野さんと会ったというのに、いつもゲームの話ばかりだ。
ただ、それが矢口君にとっても大野さんにとっても心地いいのかも知れない。
「俺たち子供が時代の変化を目の当たりにできる場所ってのは ゲーセンなんじゃねーのかって俺は感じたぜ」
バーチャ2を見たハルオは感動したみたいだ。時代の変化を感じるレベルに。
ただこれに関しては、凄く共感してしまう。・・・ウン!
「むかーし空港でさ…俺たちが想像もつかねーようなものがどんどん出るだろうって俺言ったの覚えてっか?」
コク
大野さん、あの空港での出来事は忘れていない。
それは首に掛けている指輪のアクセサリーが物語る。
「この大きな流れを大野と見ていけたら どんなに楽しいかと本気で思ったんだよ」
要するに、一緒に居たい。
一言もそうは言っていないが、そうとしか受け止められない。
ゲームセンターに現れなかった理由を大野さんに告げる。
「自粛してただけでゲーセンに飽きたわけでもなんでもないんだよ」
「ゲーム業界はどんどん前進して大野も前へ進んでるのに
俺だけとどまるなんてカッコつかねーだろ?」
「無謀だと思ったけど」
「大野と同じ上蘭高校を受けるんだ」
要するに、一緒に居たい。
大事な事だからか、もう一度言った。「一緒に居たい」と。
こんなのもう愛の告白じゃないっすか。と思うのだがハルオ君のこの表情。
「馬鹿は馬鹿なりに足掻いてみようかって…」と、ハルオ的には正直な気持ちを伝えているだけなのだろう。
そこが彼の良い所であり、悪い所だ。
正直な気持ちを吐露するだけのハルオだが、大野さんから聞いたら告白も告白だこんなの。本人は気付いてませんって表情だ。
だが、素直な気持ちを聞かせてもらった大野さんは嬉しかった。
「一緒に居たい」はゲーマーとしてではなく女の子としてだからだ。
大野さん、「ハルオの言葉への返事」という事だろうか。
ハルオの手を握った。
自分の一緒に居たいと願う気持ちが伝わったハルオ。
その握られた手から大野さんが今どんな気持ちか伝わってきそうな気がするハルオ。
大野さんの方を、見る。
大野さんは向こうを向いている。
それは照れているからハルオを見れないだけなのだろうか。
それとも、まだハルオから欲しい言葉があるとでも言うのだろうか。
大野さんは、ハルオの手を強く握った。
さあ、どうする。
大野さんはまだ欲しい言葉があるそうだぞハルオ…
男を見せろ、矢口ハルオ…ッ!
ハルオ…ッ!?
ハルオ……(; ・`д・´)
大野さんが欲しがった言葉、それが何だったのかは解らない。
矢口君の伝えたかった言葉、それも何かは解らないままであったが伝える事無く終わってしまった。
でももしかしたら…
言葉なんてなくとも、二人にはこの握った手を通して、伝わっているのかも・・・しれない。
そう、忘れてた、入試に向かってる最中だったんだ。
大野さんの受験番号は1940。
矢口君の受験番号は…
1942ですか良い番号ですねぇ。
このレトロゲー漫画にはとても良い番号っすねぇ。
やっぱ同じ事考えてた。
試験開始。
とても落ち着いていた。
「ひとつひとつクリアしていく…」
大野さんと一緒に居たいという気持ち、それだけのために勉強してきた。
半年間、好きなゲームもせず、大好きなゲーセンも行かずとにかく勉強してきた。
そして、大野さんにもハルオの気持ちが伝わった。
後はそう、言葉で伝えるだけだ。
言葉にするのは難しく、1度はできなかった。
だが、もう一度チャンスがあれば、きっとできるはず。
なら、もう一度そのチャンスを作ろうと考えたハルオだった。
そして…もし…受かったら
大野に俺の 正直な気持ちをーー
上蘭高校合格者番号・・・
そこに1942番は・・・
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このブログ書いてる途中、思ったんです。
この漫画を歴史漫画という紹介は無理だわ。って。
【▼続編】